Tパズル(TeaTime)

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Tパズル(TeaTime)


昨今はあまり見かけなくなりましたが温泉宿の部屋の片隅に、お土産のサンプルとして、よく木製のパズル
が置いてありました。いくつかの木片ピースを平面上で組み合わせて、黒いシルエットで与えられた幾何図
形と同じ形を作るという内容です。シルエットパズルと呼ばれるこのパズルの歴史は古く、実に数えきれな
いほどの種類が世の中に存在している様です。

その中に、たった4ピースしかない驚くべきパズルがありました。
その4ピースは以下の様な形状をしたものです。



そして、これだけのピースから美しいシンメトリックなシルエットが出題されていることに驚愕しました。
そのシルエットは以下の12問でした。



これらシルエットを代表する「T字」がこのパズルの名称として使われているようです。
たった4ピースだと侮ってはいけません。結構難しいんです(汗)。
パズルのケースには、以下の様な解説が掲載されていました。
なんといってもこの形式のパズルでは、「王者」の定評を持つTパズル。
そのトリッキーなこと、さらにその単純さにおいてこれを凌ぐものはありません。

とても感動したので、お土産に買っていっても良かったのですが、
たった4ピースなので、寸法をメモってしまえば自作も可能です。(ちょっとせこかったかな:笑)

帰宅して早速作ってみようと思ったのですが、いっそのこと木製ではなくパソコン上で遊べる様に
ソフトウェアで実現することを思い付きました。単純なルールですしピースの数も4つだけで、
一番複雑なピースでも五角形ですからすぐに完成しそうです。

開発に当たって、以下の様な指針を立てました。

・複数のピースをまとめて移動、回転、反転できるようにする。
・配置時に各ピースの頂点や辺が自動フィットし、位置決めにイライラしないようにする。
・操作は極限まで簡素化し、パズルを解くという本来の思考を中断させないようにする。
・その時点のピース配置を、新しいシルエット問題としてすぐに新規追加できるようにする。

このソフトはTパズルをベースに作ったので、その名称はTで始まるものにすべきだと思いました。
一般にパズルは、息抜きの時間にやるので「コーヒーブレーク」という言葉が連想されました。
そこで、これに引っ掛けて「ティータイム」にしてみました。
TeaTime。図らずもが重なって気に入っています。

しかし!
TeaTimeの開発時のテスト工程で、Tパズルで出題されていた問題を何度も繰り返したので、
TeaTimeの開発が完了した時点では、私はもうすべての問題を解き尽くしていました。
完成した途端に、使用予定が無いなんて・・・ orz
なんとも皮肉な顛末です(笑)。



さて、ここからが本題である当ページの「思索」になります。
産み落とされた時点で不要になった不遇のソフトを目の前にして、
「ならばこのパズル自体を拡張し、新たなパズルを作ったらどうだろう」
という思いに至りました。

Tパズルのトリッキーな特性を活かした、新しいシルエットパズル・・・。
私はすぐに、どれかのピースを分断することを思い付きました。
この方法ならば、従来のTパズルで実現可能なシルエットをそのまま継承できることは自明です。
いわばシルエットパズルにおける完全上位互換を保証した拡張手法となります。

問題は、分断すべきピースを選ぶこと、そしてどの様に分断するかを決めることです。
最も複雑なピースである凹五角形や、単純で小さな三角形は、分断すべきではないと直感しました。
短い直角台形も分断すると、ピースが小さくなりすぎそうです。

そうなると最有力候補は、長い直角台形ということになります。


初めは、正方形を作ったらどうかと考えました。


次は、ひし形を作ったらどうだろうかと考えました。
こうすると、分断で新たにできた直角台形は、元からある短めの直角台形と合同になります!


右側を長方形にして、左側に短い直角台形と同じピースができるタイプも考えました。


実際にこれらの分断タイプをTeaTimeに組込んで、どんなシルエットができるか試したのですが、
どうも今一つ心が躍りません。トリッキーな難問がなかなか作れないのです。
単なる思い付きで分断したのでは、うまくいきそうにありません。
もっと戦略的に攻めないと、カット&トライでは納得できる分断方法にたどり着けないと感じました。

そこで手始めに、分断のための指針を打ち立てることにしました。
まず考えたのは、優れたシルエット問題は各ピースの輪郭を上手に隠蔽しているという点です。

検証のために極端な例を考えてみましょう。
大きさが全く同じである正方形のピース群(いわばタイルですね)で構成されるパズルがあったとしましょう。
このパズルのシルエットは、多分まったくもって簡単に解けてしまうでしょう。
つまり、各ピースの形状が異なる方が難易度を高くすることができるわけです。
ただし、あまりに各ピースの形状差が顕著だと、それをシルエット内に隠蔽できなくなるので、
難度が低下してしまうことになります。

各ピースには形状差が必要であり、しかも組み合わせると継ぎ目が判らない程度に形状が似ているという、
微妙なバランスが大切なのでしょう。このバランスを得るための重要な指針が存在していると考えました。

ピースを組合わせた際、シルエットに隠蔽されるのは内側に入り込んだ各ピースの「辺」の部分です。
ということは「辺の長さが一致」するピースが適度に存在する状態が良さそうです。
“足りなくならずに余りもしない”といった塩梅です。

更に言えば“いくつかのピースを組み合せてできた辺の長さが他のピースの辺と一致する”といった、
意外な所に同じ長さの辺が存在する組み合せ問題ができれば、より隠蔽レベルが高まることになります。

この仮説から「辺の長さ」を指針として、長い直角台形の分断を再考してみました。
これは脈あり! と感じたのが、上辺と同じ長さの底辺を持つ三角形を作る方法です。
この三角形は、元からある三角形と同様に直角二等辺三角形ですが、寸法が少し異なります。
分断でできたもう一方の図形は、形状としては直角台形のままで少し短くなりました。
そして、これも元からある直角台形と微妙に寸法が異なります。



元からあるピースと合せると、寸法が微妙に異なる直角三角形と直角台形ができたことになります。
打ちたてた指針を具現化できた感がありました。

さらにこの分断方法に筋の良さを感じるのは、新たな三角形の底辺が直角台形の上辺に等しいというだけでなく、
直角台形の下辺が、元からある小さな三角形の斜辺に等しいという点です。
ネタバレになるのであまり詳しく記載しませんが、他にも組合せによる同じ長さの辺がいろいろ作れます。
この様に隠蔽可能な辺が一気に増えました。



結果としてTeaTimeは、以下の様なピースで構成されることになります。



ピースの数は4から5に増えましたが、Tパズルの持つシンプルさは充分維持していると思います。
ピースの面積も粒がそろっており、なかなか良い感じです。



そしてたったこれだけの工夫から、美しく優れた難問シルエットが爆発的に増えたのです。
オリジナルのTパズルの問題はせいぜい十数個でしたが、TeaTimeはなんと180個以上あります!
その難問の数々を生み出したのは、当時隣の部署にいたN氏でした。

N氏はパターン認識の技術開発を行っている課長でした。TeaTimeは強く彼の琴線に触れたようでした。
彼はTeaTimeの問題追加機能をフル活用し、毎日のように新しいシルエットをメール送付してくれました。
このソフトに同梱されている問題集の内、1割がオリジナルのTパズルのもの。
1割程度が私自身のもの、それ以外の8割はほぼN氏の作品です。

180を超える素晴らしいシルエットの内、特に凄いものを1つ紹介しておきましょう。
シルエットのタイトルは「手裏剣」です。



90度単位の完全な回転対称になっています。
このシルエットが実現できたのですから、TeaTimeの分断設計は成功したと言えるでしょう。

実は開発当時(20年前です!)、TeaTimeを一般に公開することを控えていました。
Tパズルの著作権問題に抵触するかもしれないという懸念もありましたし、
元祖木製パズルの売れ行きの足を引っ張ったら申し訳ないという気持ちもあったのです。

しかし、Tパズルは当の昔から存在していた作者不詳のパズルのようですし、
商品の売上げに影響を及ぼすほど、こんな辺境サイトのTeaTimeが有名になるはずもない(笑)。
そもそもネット検索してみると、掃いて捨てるほどTパズルの内容が紹介されています。
ネタバレのサイトすら星の数ほどありました(苦笑)。

5ピース版のTパズル(つまりTeaTime)は、未だどこにも存在していないようですし、
N氏が作った素晴らしいシルエットの数々を埋もれさせるのは忍びないと考え直し、
今般フリーソフトとして公開することにした次第です。

TeaTime(ティータイム)をダウンロードします

Tパズルがシルエットパズルの「王様」だとすれば、
TeaTimeは「王子様」ぐらいの風格は持てたのではないか、
と考えています。

温泉宿に一泊や二泊逗留しても、とても総てを解けないことを保証します!
ぜひダウンロードして、ティータイムにお楽しみください。

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